この冬は、ここ数年南国で暮らしてきた私たちにとって6年ぶりの冬だった。次男三男にとっては、人生初めての寒い寒い日常。
身を切るような風の冷たさや、日の出の遅い朝の暗さは、子どもたちの体調を崩し、気力を奪った。ぐずぐずとする日も多く、母親である私は、イライラとため息の日々。
その一方、子どもたちには感動も多い。初めてみる氷や、舞い降りる雪や、冬至とクリスマスを終えてから日々膨らんでくる木の芽を見つけて、毎日キラキラと目を輝かせながら報告してくるその姿は、本当に嬉しそうだ。
「ママ見て!早く来て来て!お空が綺麗だよ!」
と、パジャマ姿で、暁の空を指さす小さな子どもたち。
自転車での通学が寒くて文句を言いながらも、まだ空に残る白くなった月を見つけて喜ぶ中学生の長男。
時折、子育てに不安になる私は、こんな声を聞くと「オランダに来てよかったなぁ」と安堵する。冬を共に暮すことで、彼らと、たくさんの美しいものを共有できている気がする。
私は、植物と同じように、人間もその居住する環境の影響を受けて、育っていくのではないかと思っている。それと同時に、どんな環境でも揺るぎない芯のようなものが、多様な社会で暮らしていくには大切なんじゃないかなとも考えている。
その人間の芯を育くんでいくために、特に幼少期に美しいものに接することは、欠かせないのではないか。そんなことを夫婦で話し合ったのはいつのことか。子どもたちの目に映る世界を、美しいものにしたい。その思いで続けた旅の先にあったオランダという土地は、子どもたちの感覚を育て、そして思考する力を養うのに、向いているような気がしている。
美しいものは、きっと、命の原動力に。
さぁ、もう春だ。陽の射すほうへ!この多様な社会を、家族みんなで歩いていこう。美しいものを探しながら。