友人の一人が、長い闘病の末、亡くなった。言葉にならない思いがいっぱいあって、どうしていいかわからなくて。香りと、共通の友人に助けられた、という自分のための記録です。
彼女とは、バリ島ウブド在住時に、定期開催していたアロマクラフト会で出会った。secret gardenという素敵なオープンカフェで、おいしくてヘルシーなごはんを食べたりしながら、香りとともに過ごす午後。初対面の彼女は、細身で笑顔の可愛い人で。会の最後、ほかの方がいないところで、「乳がんのステージ3なんです」と打ち明けられた。あれはもう4,5年くらい前の話なのかな。
彼女も別の繋がりから、私と同じ精油を利用していて、日本語のアロマ情報が不足しがちの海外暮らしで、よくメッセージのやりとりをした。彼女は精油の助けも借りながら、完治に向かえないか、そう考えているようだった。
たぶん二人きりでお出かけしたことはないのだけれど、相方の演奏会にも来てくれることがあったり、なんとなく、感覚の近さのようなものを感じられる人で、バリ島を離れても、たびたびメッセージのやりとりをしたり、ご注文商品を送ったり、そんなつかず離れずの関係が続いていて。そんな彼女がこの夏、アムステルダムに遊びに来ることを、とても楽しみにしていた。
そろそろオランダに来るころじゃないかなぁと思っていた8月初旬のある日、LINEメッセージが届く。アムステルダムに来ているけれど、痛みが強くて外に出られない、と。その時も、化粧水やスティッククリームのご注文をくれたのだけれど、日程がタイトすぎて断念。次に落ち着いた先に送るね、ということに。数日前に余命1か月と宣告された、とそのメッセージには書いてあったのに、全く諦めている様子はなくて、いつものままの、明るいメッセージ。なんて強い人なんだろう。
今回会えないということは、また次回があるってことだね!
と、お互いの再会を楽しみにして、そのメッセージのやりとりは、終わってしまた。永久に。
9月21日、彼女は虹の橋を渡った。彼女のまだ15歳くらいの娘さんが訃報を英語で投稿していたのだけど、それがとても美しい文章で。忙しく落ち着ける時間がなくて、彼女の死にステイすることができなくて。涙も出ないし、感情を「飲み込んで」しまったような、心がフリーズしてしまったような、そんな状態が続いた。
そして、彼女にいつも作っていた香りを、制作ノートをひっくり返して探した。
フランキンセンス
ラベンダー
そして、彼女が選ぶブレンドオイルには必ず入っていたのは、ジャスミン。
この3つの香りを嗅いだ時に、やっと、彼女の死が現実として、私の中に入ってきた。あぁ、まさに彼女の香りだなぁと。
その数日後、ギリシャでのリトリートを終えた共通の友人まっすんとすーちゃんが、トランジットでアムステルダムへ。なくなった彼女は、まっすんのチャクラワークやヨガの生徒さん。一緒にアロマも楽しんだし、まさにバリ島暮らしで同じ空間を共にした仲間。ふたりにも、この香りをわけたくて、クリームにして、持って行ってプレゼントした。
その死の悲しみを一緒にシェアして、ハグできる人がいるっていうことが、どれだけ心強いことか。触れ合うことがどれだけ、癒すのか。ふたりに会って話して、本当にそう思った。胸の苦しみを、香りとともに解放する、そんな時間だった気がする。
彼女と会うはずで会えなかったアムステルダム。友達と意味のある時間を過ごせたことで、
好きな街に、なってきた気がする。
今、落ち着いた気持ちになって彼女の死から思うことは、自分は死と向き合って生きているだろうか、ということ。それは生と向き合って生きているだろうか、という問いと同義だ。
自分の中にいくつもあるパーツそれぞれを、大事にしよう。いいところも悪いところも。
しっかり見つめて、しっかり生きて、そして彼女のように、最終的には満面の笑みで笑える
そんな自分であったなら。
Rest in peace Chizuru
アムスで再会したまっすんことますみさんのページ。日本はもちろん、バリ島、ギリシャ、イタリアなど世界中で活躍しているヨガティーチャーです
Masumi Lacoste